白井聡『「物質」の蜂起を目指して――レーニン、〈力〉の思想』

「物質」の蜂起を目指して――レーニン、〈力〉の思想

「物質」の蜂起を目指して――レーニン、〈力〉の思想

すいせんのことば
……もし本書の提案ーー「レーニン以後、大衆の「無意識」の力を催眠術的方法によって喚起し、そこに政治権力の正統性の根拠を置くという政治手法は常套化し、ファシズムの悪夢が生み出されることにもなる。」(本書三二一頁)ーーが正しいならば、私たちが考えるべき事柄は、以下のようなことである。すなわち、レーニンフロイト等々が、揺り板でもって掬い集め、熱と風によって融かし込み、ある種の物質として私たちの目の前に投げ出した、その原材料であるところの無数のがらくた、諸々の無意識は、いったいどこから来たのか? これを仮に民衆的潜勢力とよぶならば、その諸々の力の歴史的な生産(沈降)過程こそ、私たちが考えてしかるべき党のものである。たとえば、出口王仁三郎と出口ナオ(いうまでもなく彼らは、レーニンフロイト等々の同時代人である)について、本書の展望を導きの糸として、再考することも可能かもしれない。……本書は、新しい民衆史、今日的要請と共鳴するグローバルな民衆史を構想するにあたっての、一つの手がかりを与えてくれるように、私には思われる。

さの・とものり(宗教思想史)